陽窯とは、葉山のお隣り秋谷の海を臨む高台にあるちいさな陶工房です。
陶芸家濱田陽子のアトリエであり月に数回陶芸教室も開かれています。
海からの風と山からの風が心地よく吹き抜けるこの空間は
とてもたくさんのものをインスパイアしてくれます。
「海の見えるアトリエで制作する」というのは私が焼き物を始めたばかりの頃に
ある時ふっと浮かんで来た風景でありそれがそのまま私の憧れとなり夢となりました。
焼き物を始めた笠間は山にぐるりと囲まれた盆地でした。
私がお世話になった陶房は目の前に田んぼが広がりその向こうに山が見えます。
そんな風景が当たり前の中、土に向かう日々でした。
5年ほどいた笠間を後にして東京に戻り銀座の陶芸教室に勤めます。
そこは都会の真ん中、銀座のビルの7階というそれまでとは180度違う環境でした。
ビルの窓から見える銀座の街の風景、地に足がついていないところでの作品作り、
友達には空の上で作陶しているみたいだねと言われました。
それはそれでとても面白い体験となりました。
そして8年という年月を銀座で過ごしようやくこの地に辿り着きます。
自分でも忘れていた夢であった「海の見えるアトリエ」に
ふとした偶然の重なりによって導かれるように辿り着きます。
そうして辿り着いたこの場所に暮らすようになり
暮らしと仕事が一つながりであることと
丁寧に生活することの大切さをしみじみと感じるようになりました。
私がこの場所をアトリエや教室としてだけではなく
人々が集う「場」として育てて行きたいと思ったのは
そのことを少しでも分かち合いたいという思いからです。
新しい可能性を持った場所作りをいろんな人と一緒にしていけたらと
そんな風に思っています。